経営の心理学:リフレーミング――なぜ、倒産危機のお店が大人気店に生まれ変わったのか

今回は前回に引き続き、異色のファミリーレストラン「ばんどう太郎」に関するお話です。

「ばんどう太郎」は立ち上げ当初、倒産の危機に陥りましたが、あることがきっかけで、大人気店へと生まれ変わります。では、そのきっかけとは何なのでしょうか。

1.たった一つの変更が運命を変えた

青谷社長が「ばんどう太郎」を立ち上げたのは、日本でファミリーレストランが流行り始めたころです。

当時、青谷社長は日本一のファミリーレストランを目指し、「売上げ100億円」という目標を掲げていました。

ところが、「ばんどう太郎」を立ち上げて間もないころ、スタッフがどんどん辞めていったそうです。

原因は、利益を優先するあまり、スタッフに対して厳しく接していたため。

退職者が続出し、労働力を失った「ばんどう太郎」は倒産の危機に陥ったそうです。

そんなとき、青谷社長の耳に聞こえてきたのが、「働いている人が幸せじゃないから人が辞めていくんだ」というお母さんの声でした。

この声がきっかけで、青谷社長は目標を「売上げ日本一」から「幸せ日本一」に変更しました。

そして、その新しい目標を実現するために、いろいろなことを実践していくんですね。

青谷社長が実践したのは、たとえば次のようなことです。

・「一生懸命賞」「笑顔がすてき賞」など、売上げ以外を評価する個人表彰を実施

・パートリーダーさんを「女将さん」として登用(「女将さん」に任命された方は、期待に応えようと、頑張るそうです)

・社訓を「親孝行」にし、まるで親孝行をするかのように、お客様に対して接するようにした

などなど。

「働く人が幸せになる仕組み」を青谷社長は次々に作っていきました。その結果、「ばんどう太郎」はスタッフに愛されるようになりました。

そして、スタッフの人たちも「どうすればお客様を幸せにするか」を真剣に考えるようになり、その結果、「ばんどう太郎」はお客様に愛されるファミリーレストランとなっていきました。

2.リフレーミングでスタッフの意識が変わる

さて、「ばんどう太郎」は目標を「幸せ日本一」に捉えなおしたことで、成功への道を突き進みましたが、そもそも、なぜ目標を変えただけで、これほどまでに成功したのでしょうか。

今回はその秘密を、「リフレーミング」という言葉で解釈してみたいと思います。

「リフレーミング」とは、物事を違った視点から捉え直すことを指す心理学用語です。

人は、同じものを見る場合でも、その枠組み(フレーム)によって、異なった印象を持つ傾向があります。

たとえば、「慎重」という性格を、「思慮深い」という具合にポジティブな言葉で表現すれば良い印象を受けますが、「神経質」という具合にネガティブな言葉で表現すると、悪い印象を感じ取ってしまいます。

つまり、同じものでも、捉え方(枠組み)によって異なって見えるわけです。

仕事に関しても同じです。

たとえば、「仕事」を「生活するためのお金を稼ぐためのもの」という枠組みで捉えると、苦痛を感じたり、ネガティブなイメージを持ってしまいがちですが、「お客様に幸せを提供できる場所」という枠組みで捉えなおすと、ワクワクするような、ポジティブな印象を持つことができるのではないかと思います。(もちろん、感じ方には個人差があると思います)

「ばんどう太郎」は、まさにその心理効果をうまく活用したのではないかと思います。「幸せ日本一」という目標を掲げて「幸せを追求する」ことで、青谷社長自身はもちろんのこと、スタッフの心の中でもリフレーミングが起こり、「お客様を幸せにしたい」という思考がどんどん湧き上がっていったのではないかと思います。

こうした心理的効果を上手に利用している企業は他にもたくさんあります。

たとえば、ディズニーランド。

東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの企業理念は、「自由でみずみずしい発想を原動力に すばらしい夢と感動 ひととしての喜び そしてやすらぎを提供すること」。

それから、リッツカールトン。

リッツカールトンの使命は「お客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供すること」。

これらの企業は、こうした理念を掲げることによって、スタッフに働く喜びを与えているのではないかと思います。

日々の業務や仕事をどのような「枠組み」で捉えるか。

このことは、会社の運命を決めるほど大事なことかも知れませんね。

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