なぜ、社員へのボーナスを“先払い”にしたほうが、業績がアップするのか――損失回避性

部下をお持ちの方は、社員のモチベーションをどのようにして高めるか、日頃からいろいろと試されているかと思います。

そんな方に向けて、本日は、社員のモチベーションを高めて業績をアップさせるユニークな方法をご紹介します。

1.報酬を先払いすると業績が上がる

2012年にシカゴ大学が非常に興味深い実験結果を公表しています。

その実験というのは、「教師に対するインセンティブ(報酬)の方法が、生徒の成績にどのような影響をおよぼすか」というものです。

この実験には、150名の教師が被験者として参加しました。

まず、教師たちはランダムに二つのグループに分けられました。

一つ目のグループ(グループA)の教師たちは、1年間の学期が始まる前に、ボーナスを先払いで渡されました。
ただし、もし生徒の成績が悪ければ、成績のレベルに応じて、受け取ったボーナスを返さなければいけません。

二つ目のグループ(グループB)の教師たちは、1年間の学期が終わったあと、生徒の成績の向上具合に応じて、ボーナスをもらうことができます。

さて、どちらのグループのほうが、生徒の成績が良かったでしょうか。

結果は非常に興味深いものでした。

グループBの生徒たちの成績がそれほど変わらなかったのに対し、グループAの生徒の成績は、10%ほど向上したのです!!

2.原因は損失回避性

ではなぜ、このような結果になったのでしょうか。

その原因としてシカゴ大学の研究者が挙げているのが、「損失回避性」です。

損失回避性とは、心理学用語で、「同じ額の利益と損失では、損失をより大きく評価し、損失を避けようとする心理的傾向」のことです。

分かりやすく言いますと、「人は、物を得ることよりも、失うことに対する恐怖心のほうが強い」ということです。

この「損失回避性」を使って、シカゴ大学の実験を見てみましょう。

まず、グループBの教師は、学期の初め、何も手にしていません。ボーナスをもらうのは、あくまでもその学期が終わったあとです。
そのため、グループBの教師は、生徒の成績が悪くても、何も失うものがありませんね。

一方、グループAの教師は、学期の最初にボーナスをもらいます。ただし、生徒の成績次第では、そのボーナスを失う可能性があります。

つまり、グループAの教師は、「手にしたボーナスを失う恐怖心」と闘わなければいけないわけです。

これはまさに、「損失回避性」が働いている状況だと言えます。

グループBの教師が持つ「ボーナスを得たい」という気持ちよりも、グループAの教師が持つ「ボーナスを失いたくない」という気持ちのほうが大きいことが、生徒の成績となって表れたのだと解釈できますね。

さて、この「損失回避性」は、職場の中でも活用できるのではないでしょうか。

試してみる価値はありそうですね。

参考文献:
THE UNIVERSITY OF CHICAGO「Student performance improves when teachers given incentives upfront」

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