社員の「社会的手抜き」を防ぐ方法。成功事例に学ぶ心理学テクニック

心理学に、「社会的手抜き」という言葉があります。

「社会的手抜き」とは、集団で共同作業を行うとき、人数の増加に伴って、一人当たりの仕事量が低下する現象のことを指します。

企業にとっては、良いことではありませんね。

では、この「社会的手抜き」を解決するには、どのようにすればよいのでしょうか。

今回は、或る企業の成功事例をもとに、解決のヒントを探りたいと思います。

1.「社会的手抜き(リンゲルマン効果)」とは

およそ100年前、ドイツの心理学者マクシミリアン・リンゲルマンが「綱引き」を使った実験を行いました。

その実験によると、1人で綱引きをした時に綱を引く力を100%だとすると、2人で綱を引いた時の一人当たりの力は93%に減少。さらに3人で綱を引いた時は85%、8人になると一人当たり49%にまで減少したということです。
(参考文献:Ringelmann effect – Brunelleschi’s Egg

つまり、グループの人数が増えるほど、一人ひとりの心の中に「ほかの人が頑張るから、自分は力を抜いても大丈夫だろう」という心理が無意識のうちに働いて、手抜きが行われたわけです。

では、このような「社会的手抜き」はどのようにすれば解決できるのでしょうか。

後の研究により、以下のような方法によって 社会的手抜きは減少することがわかりました。

① 集団メンバー各自の成績・努力を簡単に確認できるようにする。
② 課題を魅力あるものにし、各自仕事を懸命にするようにさせる。
③ 集団メンバー各人に、自分自身の貢献度を評価する機会を与える、 あるいは標準や基準を与える。
④ 集団凝集性(集団の魅力:集団に属していることへの魅力)を強める。
(参考文献:心理学入門講座「社会的手抜きとは?」

さて、これらの方法を実践し、成果を挙げている企業があります。

その企業の名前は、玉子屋。

玉子屋が実践している組織術をご紹介します。

2.受注からわずか3時間で7万食のお弁当を配達する企業

玉子屋は、東京都大田区に本社があるお弁当屋さんです。
東京都心の14区を中心に、およそ4000社の企業にお弁当を配達しています。

玉子屋が一日に配達するお弁当の数はおよそ7万食なのですが、すべての注文を朝9時~10時に受け付け、お昼12時までにお客様に届けなければいけません。

つまり、7万食すべての注文をたった1時間の間に受け付け、そのわずか2~3時間後に、約4000社あるお客様のもとに配達しているわけです。

しかも、配達先や数量は毎日変化しますので、ごく限られた時間の間に、状況の変化に応じて対応しなければなりません。

臨機応変に動く組織を作らなければ、成し遂げられない仕事です。

では、玉子屋はどのようにして、組織を作り上げているのでしょうか。

3.玉子屋はいかにして社員のやる気を引き出したのか

玉子屋の組織の最大の特徴は、「班制度」という仕組みを採用している点です。
「班制度」とは、独立する各班(ユニット)に様々な権限を与え、自立した活動を促す組織運営方法のことです。

たとえば、各班の班長には、次のことを決める権限が与えられています。

・アルバイトの時給
・社員の昇給・賞与
・配送車両の融通
・エリア内営業戦略
などなど。

班長は、あたかも自分の会社を経営するかのように、自らの判断で、自分の班を運営することができるわけです。
(ユニークなのは、「アルバイトの時給」や「社員の昇給・賞与」を決める権限さえも、班長に与えられている点です)

そして、各班の成績は、その班に属するスタッフの給与に影響します。

さらに、各班には、ミッションが与えられています。

ミッションのひとつが、「限られた時間の中で、お弁当を配達をし終える」ということ。

各班は、まるでゲームを楽しむかのように、このミッションの達成に没頭しています。

仕事を「ゲーム」のように捉えているからこそ、スタッフたちは自分自身で考え、自分の意思で行動しようとするわけです。

玉子屋が実践しているこれらの事柄は、前述した「社会的手抜きを解決する方法」とまさに一致しています。

玉子屋は、こうした組織運営をすることにより、社員のモチベーションを高め、臨機応変に問題解決ができる組織を作ることに成功しています。

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